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発達障害のある人々への経済的支援について

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品川区に対する当事者団体としての要望

 品川区の発達障害当事者団体として、区に対する政策の要望の草案をこちらで挙げさせていただきます。
 さらに皆様のご意見ご要望を伺いブラッシュアップしたうえで、タイミングを図り区に要望したいと考えております。

 ご意見、ご要望がありましたら「お問い合わせ」よりお願いいたします。


発達障害当事者の多くが、生活の困難に直面しています

 発達障害のある人々は、特性により就労や対人関係の維持に困難を抱えやすく、働く意欲や能力があっても「安定して働き続けること」が難しいケースが少なくありません。

 厚生労働省「令和5年障害者雇用実態調査」によれば、発達障害者の平均月収は約13万円で、東京都品川区における生活保護基準(月額生活扶助+住宅扶助の上限額:約13万円)と同水準です。
 しかし、生活保護には医療費や家賃などの免除・補助があります。一方、就労によって得られた13万円にはそうした保護がないため、実質的には「生活保護以下」の生活を送る方も多くいます。
 さらに、この統計は「就労できている方」のみを対象にしているため、就労が困難で収入がゼロに近い方々の実情は反映されていません。
 2023年の「きょうされん」調査では、障害者の79%が年収127万円未満(相対的貧困ライン以下)であり、生活の不安定さが慢性化していることがわかっています。


経済的支援の不備は国連からも課題とされています

 こうした状況は日本全体の制度的課題でもあり、国際社会からも明確に指摘されています。
 2022年、国際連合・障害者権利委員会は、日本政府に対する初回審査の総括所見において、以下の点を懸念事項として明示しました(第25条「健康」/ 第28条「相当な生活水準および社会的保障」に関する総括所見より抜粋):

  • 障害者への医療費補助が不十分であること
  • 障害に関連する追加的費用をカバーする社会保障制度が不十分であること
  • 障害年金が市民の平均所得に比べて著しく低額であること
  • より多くの支援を必要とする人々への生活基盤の保障が不十分であること

 この指摘を受け、同委員会は日本に対し、社会保障制度の強化と、障害当事者団体との協議に基づいた制度見直しを勧告しています。


品川区から、できることを一歩ずつ

 こうした国際的な勧告に基づく制度の整備は本来、国レベルで行われるべきものです。
 しかし、私たちは基礎自治体だからこそ、生活に密着した柔軟な支援を先行して実現できると考えています。
 そのため、以下のような金銭的支援制度を品川区に提案したいと考えています。


私たちの政策提案(草案)

精神保健福祉手帳や自立支援医療用の診断書費用の助成

 精神保健福祉手帳や自立支援医療の申請には医師の診断書が必要ですが、1通5,000円〜10,000円と高額で、申請をあきらめる事例もあります。
 特に、精神保健福祉手帳の取得は公的支援の基本であり、金銭的理由で躊躇するようなことがあってはならないと考えます。
 また、精神保健福祉手帳と自立支援医療に必要な診断書は一通で済ませることが可能であり、それを前提に2年に一度の助成は現実的かつ有効な支援であると考えます。
 なお、既に埼玉県さいたま市や、都内でも武蔵野市が診断書への助成を制度化しています。

医療費自己負担分の助成(精神障害者保健福祉手帳2級)

 精神疾患による通院に関しては、既に自立支援医療による負担の軽減が図られておりますが、発達障害や精神障害がある人は、そうでない人と比較して身体疾患にかかりやすく、また怪我をするリスクも高いことが医学的な研究で明らかになっており、医療費の負担に苦しんでる当事者が少なくありません。
 東京都は既に「心身障害者医療費助成制度(マル障)」として精神障害者保健福祉手帳1級の保有者への医療費助成がありますが、これを精神障害者保健福祉手帳2級にまで品川区独自の拡大をお願いしたく存じます。
 あるいは、精神障害者保健福祉手帳2級保持者は1割負担、精神障害者保健福祉手帳3級保持者は2割負担などのような医療費助成をお願いします。
 なお、既に基礎自治体でも神奈川県藤沢市海老名市は無条件で、神奈川県相模原市鎌倉市、愛知県名古屋市は所得制限つきで、千葉県浦安市は入院医療費に対して、精神障害者保健福祉手帳2級の保有者に対する医療費助成を行っています。

現金給付制度の拡張(同2級対象)

 働いていても収入が不安定な方や、就労が難しい方に対し、継続的な生活支援として現金給付制度の整備を望みます。
 制度として障害年金もありますが、保険料未納などにより無年金の当事者も少なくありません。
 また、障害年金は保険原理で運営されており、老齢年金とのバランスもあり、増額は容易ではありません。
 国連からも障害年金が著しく低額であるとして、障害者団体と協議をして障害年金の額を見直すよう勧告がなされていますが、一向に国は対応する気配すら見せません、
 障害者の生活保障として、自治体が現金給付制度を用意している事例は多く、品川区でも既に制度はありますが、精神障害に対しては、精神障害者保健福祉手帳1級のみが対象となっています。これを2級まで拡張しての支給をお願いします。
 なお、基礎自治体としては、埼玉県さいたま市、兵庫県姫路市、富山県富山市が精神障害者保健福祉手帳2級保有者に現金給付を行っています。

生活保護の方への障害者加算の自主調査と遡及支給

 2025年1月24日名古屋地裁は、障害のある生活保護者への障害者加算の不支給を「調査義務違反」とし、愛知県名古屋市に対して遡及しての支給を命じました
 この判決は、生活保護を受けている障害者は障害状況により障害者加算が支給されますが、申請がなければ障害者加算は支給されませんでしたが、この扱いが「調査義務違反」とされました。
 この判決により、佐賀県佐賀市や大阪府堺市で、障害者加算の支給漏れを遡及して支払ったとのことです。
 品川区においても、国家賠償請求などの提訴がなされる前に、加算申請がなくても調査により対象者を把握し、必要に応じて支給をお願いします。

結びに

 国連からも指摘されたとおり、障害のある人々の生活保障の強化は、いま日本に求められている大きな課題です。
 しかし、これを国に委ねるだけでなく、地域から具体的な施策として実現していくことが、真の共生社会を築く第一歩だと私たちは信じています。
 品川区がこの問題に先んじて取り組み、他の自治体に先駆けて障害者権利条約の理念を地域で体現することを、私たちは心から願っています。
 今後、この提案は正式な政策要望書として区議会・区に提出予定です。進捗は当ホームページで随時ご報告いたします。
 皆さまのご理解とご協力を、心よりお願い申し上げます。

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